臨床心理学における最近の潮流の一つに、身体心理学というものがあります。
Somatic Experiencing®︎の創始者であるPeter Levineにより、トラウマは自律神経の蓄積されたエネルギーであると説明され、逃げることも戦うこともできずに、シャットダウンした凍りつきのエネルギーが、神経系で解放されずに残ってしまっているため、各種の様々な症状として現れるということが分かってきました。
ここでいう各種の様々な症状とは、精神医学の診断基準に基づいて診断するならば、双極性障害、気分障害(うつ病)、摂食障害、社交不安障害、パニック障害、適応障害、愛着障害などの心の問題、身体の問題としての頭痛、胃痛、不眠、過緊張、過敏性腸症候群、線維筋痛症、慢性疲労症候群など、心身症とも呼ばれる多くの病態を含みます。
自律神経という脳の深い部位(脳幹)から出ている神経系にアプローチする為には、前頭葉などの高次の部位を使う言語的なカウンセングだけでは不十分で、身体の感覚にフォーカスしていく必要があります。
この身体感覚を用いたトラウマセラピーであるSomatic Experiencing®︎は、米国でトレーニングを受けた心理セラピストであり、カリフォルニア州Marriage and Family Therapist(MFT)であった藤原千枝子氏により日本に紹介され、2009年よりSE®︎プラクティショナーを養成するためのトレーニングが始まりました。
彼女の訳本「心と身体をつなぐトラウマセラピー」(ピーター・リヴァイン著、藤原千枝子訳、2008)には、どのようにトラウマが人々に作用し、影響を与えているのか、どのようにこのセラピーが生み出されたのか、詳しく書かれています。
実際にこのセラピーを受けてみると、“心と身体とは一つである“ということが、体験(Experiencing)として分かります。
薬物療法は、症状を緩和したり、一定程度コントロールするためには役立ちますが、本当の癒しはその先が必要で、自分の心と身体と向き合うこと、特に身体の感覚のレベルで癒されていくことが大切です。
凍りついていたことも、生き延びるための生存戦略であり、無意識の知恵であり、選択でもありました。
これからは癒しに取り組むための安全さを確保し、自分の身体からくるメッセージに、耳を傾けていきましょう。
コリント人への手紙第一3:16−17 あなたがたは神の宮であり、神の御霊が自分のうちに住んでおられることを知らないのですか。もし、だれかが神の宮を壊すなら、神がその人を滅ぼされます。神の宮は聖なるものだからです。あなたがたは、その宮です。
